「介護の仕事」と聞くと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、利用者さんの身体介助をする「介護職員」ではないでしょうか。
実は、介護の現場を支える仕事はそれだけではありません。
利用者さんと直接関わる仕事だけでなく、裏方で支える事務やマネジメント、専門的なサポートを行う医療職まで、さまざまな役割があります。
これから介護業界に関心を持つ方も、転職を検討中の方も、まずは「介護の仕事にはどんな仕事があるのか」を知ることが大切です。
この記事では、介護の現場に関わる代表的な職種を一覧でご紹介し、それぞれの役割や特徴、どんな人に向いているかなど、今後の記事で詳しく解説していくための入り口となる情報をまとめました。
介護の現場にはどんな職種があるの?
介護業界には、
- 「直接支援を行う仕事」
- 「その支援をサポートする仕事」
- 「専門的な知識や資格を活かす仕事」
- 「施設全体をマネジメントする管理職」など
多様な役割と職種が存在します。
たとえば、利用者さんの生活に寄り添う介護職員や介護助手、利用者の相談やケアプラン作成を担うケアマネジャーや生活相談員、健康面を支える看護師や管理栄養士、機能訓練指導員、さらに、施設全体を支える管理職や事務職など、チームで支え合う構造になっているのが大きな特徴です。
それぞれの仕事には異なる役割と魅力があり、自分の経験やスキル、興味関心に応じて選ぶことができます。
主な介護の仕事とその概要
ここでは、介護の現場で活躍する代表的な職種をピックアップしてご紹介していきます。
■ 介護職員(介護士・ヘルパー)
「介護の仕事」としてイメージされる、もっとも代表的で身近な存在です。
介護の現場における中心的な役割を担います。
食事や入浴、排せつの介助をはじめ、移動の補助や衣服の着脱、レクリエーションの企画・運営など、利用者の日常生活を幅広く支援します。
また、心のケアや見守りも大切な仕事のひとつで、利用者との信頼関係を築く力も求められます。
無資格・未経験から始められる職場も多く、初任者研修などの資格取得を通じてキャリアアップが可能です。
介護福祉士やケアマネジャーを目指す道も開けており、長期的なキャリアを描きやすい仕事でもあります。
高齢化が進む現代において、社会的なニーズが非常に高く、やりがいを感じられる職種のひとつです。
👉 詳しく読む → 老人ホームでの介護職、1日の流れを徹底解説!

■ 介護助手
介護助手は、介護職員をサポートする存在として、主に身体介助以外の業務を担当します。
たとえば、ベッドメイキングや洗濯、居室の清掃、配膳や後片付け、利用者の移動時の見守りなど、施設内の生活環境を整える役割があります。
利用者と接する機会も多いため、優しさや気配りが求められます。
この仕事は、資格や経験が不要で始められることが多く、介護の現場を体験してみたいという方や、将来的に介護職員を目指す人の“入り口”としても適しています。
体力的な負担が少なめで、シフトの柔軟性がある職場も多いため、主婦やシニア層にも人気があります。
また、介護職員として定年退職を迎え、その後も働きたいがこれまでと同じように介護職員として働くのは難しい人の継続雇用の道としても使われています。
👉 詳しく読む → 介護助手とは?無資格でもできる仕事内容と魅力

■ ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、要介護者に対するケアプラン(介護サービス計画)の作成を専門とする職種で、介護保険制度の中核を担います。
利用者本人やその家族の要望を丁寧にヒアリングし、必要なサービスや介護内容を整理・提案します。
また、医療機関、介護施設、福祉事業者、行政など多職種との連携調整も行い、利用者の生活全体を支える司令塔的な存在でもあります。
ケアマネジャーになるには、介護福祉士や看護師などの実務経験が必要で、一定のキャリアを積んだ後に国家資格を取得する流れが一般的です。
事務能力、調整力、コミュニケーション力、そして利用者を想う心が求められます。
責任は大きいですが、やりがいも非常に高い専門職です。
👉 詳しく読む → 高齢者施設の生活相談員とケアマネの違いを徹底解説!あなたに必要な知識とは?

■ 生活相談員
生活相談員は、介護施設において利用者とその家族の「窓口」となる重要な役割を担います。
主な業務は、入所や通所に関する契約手続き、利用者からの相談対応、家族との連絡調整、そして行政機関とのやり取りなどです。
また、介護スタッフや看護師、ケアマネジャーなど他の職種と連携し、利用者のニーズに合ったサービスが提供できるよう支援します。
加えて、利用者が安心して生活できるように心理的なサポートを行うことも多く、信頼関係の構築が非常に重要です。
生活相談員には社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士などの資格が求められる場合もありますが、施設によって要件は異なります。
利用者、利用者家族、介護スタッフなど、多くの人と関わることが好きで、調整力や対話力に自信がある方に向いている仕事です。
👉 詳しく読む → あなたもなれる!生活相談員とは何か?知っておくべき資格と仕事内容

■ 看護師(介護施設勤務・訪問看護)
看護師は、介護施設において利用者の健康状態を日常的に見守り、医療的な観点からサポートする専門職です。
バイタルチェックや服薬管理、医師の指示に基づく処置のほか、発熱や体調不良など緊急時の初期対応も担当します。
利用者の小さな変化にも気づける観察力が必要であり、高齢者に寄り添う丁寧なケアが求められます。
病院勤務とは異なり、介護施設では急性期の対応よりも「生活の場」における継続的な健康管理が中心です。
そのため、利用者やご家族とのコミュニケーションが多く、信頼関係の構築やチーム内の連携が非常に重要となります。
介護スタッフとの協力を通じて、利用者がより安心して過ごせる環境づくりに貢献する、やりがいのある仕事です。
👉 詳しく読む → 介護施設で働く看護師の役割とやりがい
■ 管理栄養士・栄養士
管理栄養士や栄養士は、介護施設において利用者の健康を食事面から支える重要な存在です。
特に高齢者にとって、栄養バランスのとれた食事は健康維持や病気予防、回復の促進に直結するため、食事の提供は介護の根幹ともいえる業務です。
管理栄養士は、施設内の献立作成や栄養価の計算、調理スタッフへの指導を行うとともに、利用者一人ひとりの健康状態や嚥下能力に応じた食事形態の工夫をします。
栄養指導が必要な利用者に対しては、医師や看護師、介護職員と連携しながら個別に支援を行います。
栄養ケア・マネジメント(栄養スクリーニング、アセスメント、モニタリングなど)も担当し、食を通じた介護の質向上に貢献します。
一方、栄養士は主に調理業務や日々の食材管理、衛生管理、献立の実施などに携わります。
小規模施設では、栄養士が管理栄養士の役割を一部担うこともあり、柔軟な対応が求められます。
食べることが楽しみとなるような食事を提供することも、介護施設においては大切なケアのひとつです。
利用者の「おいしい」「また食べたい」の声を引き出すために、季節感や彩り、嗜好を考慮した工夫が求められます。
管理栄養士や栄養士は、単なる栄養管理者ではなく、介護チームの一員として「食」を通じて利用者の生活を豊かにする役割を担っているのです。
👉 詳しく読む → 管理栄養士・栄養士の仕事とは?施設での役割とやりがい
■ 厨房・調理スタッフ
介護施設の厨房・調理スタッフは、利用者にとって大きな楽しみのひとつである「食事」を支える重要な職種です。
管理栄養士や栄養士が作成した献立に基づき、衛生管理を徹底しながら、温かく・おいしく・安全な食事を提供するのが主な役割です。
業務内容には、食材の下処理、調理、盛り付け、配膳、食器洗浄、厨房内の清掃などが含まれます。
また、特別な食事(刻み食、ミキサー食、アレルギー対応食など)への対応も求められ、細やかな注意と丁寧な作業が必要です。
介護施設の調理では、味だけでなく「食べやすさ」や「見た目」にも配慮します。
高齢者にとっては、食事の形状や温度、香りが食欲に直結するため、調理スタッフの工夫が利用者の健康や生活の質に大きく影響します。
栄養士や介護スタッフとの連携も不可欠で、体調の変化に応じた食事の調整や、喫食状況のフィードバックなど、チームで支える意識が求められます。
調理経験があれば活かせますが、未経験からスタートできる施設も多く、やる気と丁寧さがあれば十分に活躍できる職種です。
「食事で笑顔を届けたい」「誰かの役に立ちたい」と思う方には、とてもやりがいのある現場です。
👉 詳しく読む → 厨房・調理スタッフの仕事とは?介護施設で求められる役割と魅力
■ 営繕スタッフ
営繕スタッフは、介護施設の建物や設備の維持・管理を担う裏方のプロフェッショナルです。
利用者が安全かつ快適に過ごせる環境を整えるために、日々さまざまな修繕・点検・清掃業務を行います。
具体的な仕事内容には、照明やエアコン、水回りの不具合対応、ドアや手すりなどの修理、電球交換、施設の巡回点検などが含まれます。
また、車いすやベッドなど福祉用具の点検・調整、除雪や草刈りといった季節業務、災害時の備蓄管理など、多岐にわたる業務をこなします。
利用者の安全に直結する設備のメンテナンスが多いため、電気工事士などの資格や、建築・設備管理の経験があると重宝されます。
ただし、小規模施設では未経験者でも丁寧な研修を受けながら働けるケースも多く、手先が器用で几帳面な人に向いている仕事です。
営繕スタッフは、直接介護には関わらないものの、安心・安全な施設運営を陰で支える欠かせない存在です。
目立たないけれども「いなくては困る」仕事として、現場のスタッフや利用者からの信頼も厚い役割です。
👉 詳しく読む → 営繕スタッフの仕事とは?施設を支える縁の下の力持ち
■ 運転手
介護施設における運転手の仕事は、利用者の通所・送迎をはじめとした、安全で快適な移動手段の提供です。
デイサービスやショートステイなどでは、利用者の自宅から施設までの送迎業務が日常的に発生するため、運転手は施設の“顔”としての役割も担います。
主な業務には、施設車両の運転、乗降時のサポート、車両点検・清掃、利用者の安否確認やご家族との簡単なコミュニケーションなどが含まれます。
高齢者を安全に送迎するため、急ブレーキや急発進を避けた丁寧な運転と、利用者への気配りが求められます。
また、車いすの昇降や固定、歩行が不安定な利用者への介助補助などもあり、介護職員との連携が不可欠です。施設によっては、運転業務と兼務で営繕や簡単な介助業務を担うこともあります。
普通自動車運転免許(AT限定可)で働けることが多いですが、中型や福祉車両運転経験があると歓迎される職場もあります。
介護の知識がなくても始められますが、「人を大切にする心」と「安全第一の姿勢」が最も大切な資質です。
人と接することが好きな方、社会貢献を感じながら働きたい方にとっては、とてもやりがいのある職種です。
施設にもよりますが、先ほどの「営繕スタッフ」と業務を兼用する場合もあります。
👉 詳しく読む → 未経験でも安心!介護ドライバーの仕事内容と魅力

■ 管理者・施設長
管理者・施設長は、介護施設全体の運営と管理を担う重要なポジションです。
職員のシフト管理や育成・マネジメント、利用者との契約手続き、サービス品質の管理、そして行政への報告・対応など、多岐にわたる業務を統括します。
現場での介護業務への理解や経験を活かしつつ、経営的な視点やチームビルディングの力が求められます。
また、トラブル対応やクレーム処理、施設内の安全対策、感染症対策など、責任の重さと判断力が問われる場面も多くあります。
一方で、施設の雰囲気づくりや理念の浸透など、組織の文化を育てる役割も担うため、人材育成にやりがいを感じる方や、リーダーシップを発揮したい方に適した仕事です。
小規模施設では、実務を兼務することもあり、柔軟性や幅広いスキルが求められます。
👉 詳しく読む → 介護施設の管理者って何をするの?必要なスキルと責任
■ 事務職(介護事務・受付)
介護施設において、事務職は“縁の下の力持ち”として、スムーズな運営に欠かせない存在です。
主な業務には、介護報酬請求(レセプト業務)、利用者情報の入力・管理、電話応対、受付業務、備品管理、勤怠管理などがあります。
請求業務は専門的な知識を必要としますが、医療事務ほど難しいものではなく、専門的な資格などは必要ありません。民間の介護事務資格がありますので、資格を持っていると業務の幅が広がり、即戦力としての活躍が期待されます。
また、利用者やその家族、訪問者の第一印象を左右する受付としての役割も重要です。
丁寧な言葉づかいや気配りが求められ、コミュニケーション能力が活かせる仕事です。介護現場の最前線ではないものの、職員や利用者を間接的にサポートすることで、大きなやりがいを感じられる職種です。
👉 詳しく読む → 介護事務の仕事とは?資格・働き方・やりがいを解説
【まとめ】介護の仕事は“チーム”で支えている
介護の現場は、さまざまな職種が密接に連携しながら成り立っています。
それぞれの職種には異なる役割と専門性があり、どれかひとつが欠けても現場全体のバランスが崩れてしまうほど重要な存在です。
介護職員が日常生活をサポートし、看護師が健康を守り、ケアマネジャーが全体の計画を立て、事務職が運営を支える——そんな多職種がチームとして協力し、利用者さんの生活を支えています。
特に介護の現場では、単なる役割分担ではなく、お互いの立場や状況を尊重しながら助け合う“チームケア”の意識が欠かせません。
一人ひとりが「自分の仕事」に誇りを持ちながら、同じゴールを目指して動く姿勢が、結果として利用者さんの安心や笑顔につながるのです。
これから介護業界に関心を持つ方にとっても、すでに業界で働いている方にとっても、「どんな仕事があるのか」「自分はどこで力を発揮できるのか」を知ることは、新たな一歩へのきっかけになるはずです。
あなたに合った仕事がきっとあるはずです。
次回以降の記事では、今回ご紹介した各職種について、実際の業務内容や働き方、必要な資格、リアルな体験談などを交えながら、より詳しく掘り下げていきますので、ぜひチェックしてみてください。